白杖を構えて歩く人にクラクションを鳴らした車を見ました

夜の時間帯に道を歩いていました。
突然、前方で車のクラクションの音がしました。
歩道のある道ですが、かなり車道にはみ出したところを歩いている人の影が見えました。

近くには、信号のない横断歩道があるのですが、車のヘッドライトとその人との重なりから、横断歩道からも外れているようでした。
歩行者は頼りない足取りで歩道側に避けていました。

遠目では、歩きスマホでもしているのかという印象でした。

歩行速度が速くなかったので、その後、その人を追い抜くことになり、横目で気付きました。
白杖を構えて歩いていたのです。

たしか、道路交通法には障がい者に関する規定がいくつかあったということと、クラクションを鳴らす行為自体に違法の可能性があるのではないかと思いました。
調べた結果を書いておきます。

状況や解釈によっては、運転手さんは道路交通法違反です!

車のイラスト

歩行者関係の部分を確認

道路交通法を確認します。
同法には、『目が見えない者』という書かれ方で、視覚に障がいのある人に関することが書かれています。

運転者が守らなければいけないこと

『運転者の遵守事項』として、書かれています。

(運転者の遵守事項)
第七十一条  車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
【略】
二  身体障害者用の車いすが通行しているとき、目が見えない者が第十四条第一項の規定に基づく政令で定めるつえを携え、若しくは同項の規定に基づく政令で定める盲導犬を連れて通行しているとき、耳が聞こえない者若しくは同条第二項の規定に基づく政令で定める程度の身体の障害のある者が同項の規定に基づく政令で定めるつえを携えて通行しているとき、又は監護者が付き添わない児童若しくは幼児が歩行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行又は歩行を妨げないようにすること。
【略】

『運転者』なので、自転車などの軽車両も含みます。
馬や人力車なども対象です。

いったん止まるなり、徐行するなりして、歩行者の通行を妨げてはいけないのです。
『・・・なければならない』などの表現ではないので、義務ではないという説もあります。
ただ、停止義務は車両側というのは、同法の大原則です。

ちなみに、第十四条には白杖に関することが書かれています。

歩行者が守らなければいけないこと

あまり知られていないようですが、『目が見えない者』は、公の場所を歩く時、白杖の携行(もしくは盲導犬の同行)を義務付けられています。

(目が見えない者、幼児、高齢者等の保護)
第十四条  目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む。以下同じ。)は、道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない。
【略】

こちらは、『・・・なければならない』で終わっているので、はっきりとした義務です。
エコーロケーションのみでの歩行は、違法の可能性がありそうです。

ちなみに、ここでは「白杖」と記載してきますが、正確には『政令で定めるつえ』です。
黄色の場合もありますし、いわゆる「盲人安全つえ」とは異なる形状の場合もあります。

クラクションに関する部分を確認

道路交通法では、クラクションのことは『警音器』と書いてあります。
自転車のベルなども含まれます。
(運転免許証を持っている人には常識ですね!)

(警音器の使用等)
第五十四条  車両等(自転車以外の軽車両を除く。以下この条において同じ。)の運転者は、次の各号に掲げる場合においては、警音器を鳴らさなければならない。
一  左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上で道路標識等により指定された場所を通行しようとするとき。
二  山地部の道路その他曲折が多い道路について道路標識等により指定された区間における左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上を通行しようとするとき。
2  車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。

指定の場所以外でクラクションを鳴らすことができるのは、『危険を防止するためやむを得ないとき』のみです。
歩道を走ってきた自転車が歩行者にベルを鳴らしている光景を見ることがありますが、違法です。自転車側が止まればよいのです。

クラクションを鳴らすことで危険を避けることができる場面はあるのでしょうか。
居眠り運転の人を起こすためくらいしか考えられません。

車のイラスト

状況を考えてみました

今回は、どちらともいえないという結論です。

クラクションを鳴らすことができる例として、参考になる判例があります。

車両の接近に気がつかずにその前方を横断しようという歩行者を認めた場合

考えてみると、やや苦しいと思います。

歩行者の状況

今回の場合、歩行者は視覚に障がいのある人です。
外を歩くときには、相当な神経を使って、周りの様子を目や耳で探っています。
「目」と書いたのは、全盲とは限らないからです。

夜間、前照灯を点けて走ってくる車に気付かないということは、ほぼ考えられません。
発行体は目立ちますし、車は走行音や駆動音がします。案外分かりやすい存在です。
(無灯火の自転車の方が怖いのです)

恐らく、今回の歩行者にとって分かりにくかったのは、歩道のガードレールの方です。

(ちなみに、歩行者が聴覚に障がいのある人だったら、クラクションを鳴らしても気付かない可能性があります)

『車両の接近に気がつかず』は到底当てはまらないでしょう。

一応、可能性として、視覚と聴覚の重複障がいということもあります。
その場合は、クラクションを鳴らすこと自体、意味がありません。

運転手さんが考えたであろうこと

運転手さんは、歩行者が自分に気付いていないと解釈したのでしょう。
見解の相違です。
不幸なことです。

それから、白杖が車に当たると思ったかもしれません。
自分の車が傷つくかもしれないという考えに至っても、仕方のないことです。
そんなに激しく当たることはまずないのですが、素材や使い方を知らなければ、心配するかもしれません。
近くに何かがあると分かっている場合は、優しく触れるように動かすのです。

あるいは、すごく急いでいたのかもしれません。(歩行者を急かすのは違法です)
心が整っていない時には、車両を運転してはいけません。

SUVのイラスト

違法性は?

激しい鳴らし方ではなかったので、運転手さんの意図次第になると思います。
『気付いてほしい』ということであれば、違法!とは言いきれない可能性もあります。

運転免許証を持っている人は認識済みと思いますが、警音器を人に向けて鳴らすのは、基本的にはなしです。

警音器を鳴らした時点で、警音器使用制限違反と言われても文句は言えません。

車が止まればよいのです。
もともと人通りの多い道なのですから、車が徐行すればよいだけのことです。

知っていれば心安らか

上述したとおり、白杖を構えて歩いている人は、(一般的には)周りの様子をうかがいながら、慎重に行動しています。
慎重さには個人差があります。大雑把な人ももちろんいます。

特別扱いは必要ないと思います。
でも、白杖を構えている人がいたら、少しだけ見守ってみる、危なそうだったら声をかけてみるなど、ちょっとだけ気を向けてみたらよいのです。
声をかけるのは勇気のいることですから、「車だー」とか、「崖だー」とか、言ってみれば、何か反応してくれるかもしれません。
無視されたら、独り言だったことにすればよいのです。

なお、白杖を高く掲げている人がいたら、必ず声をかけてください。
助けを求めているサインです。(いきなり触るとびっくりさせますので、必ず声かけからです)

同じ土地に住む者同士です。
お互いに譲り合って、理解しあっていけたらいいなと思っています。

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