間取り図を見るのが好きなら、『変な家』の出だしには引き寄せられると思う。
ふだんから不動産会社の広告や、店頭に貼られている物件の間取りを見るのが好きで、変わった部屋を見つけるとつい立ち止まってしまう。
そんな自分にとって、家の間取りにある小さな違和感から話が始まる『変な家』は、かなり気になる作品だった。

変な家
感想
というわけで、今回のAmazon Music Unlimited のAudible無料枠で聴いてみた。
謎が少しずつつながっていく感じは楽しい。
一方で、登場人物や過去の出来事が増えてくると、音声だけでは関係を整理しづらい。
結論から言うと、発想は面白い。
ただし、間取り図を見ながら読むほうが向いている作品だと感じた。
『変な家』はどんな作品?
『変な家』は、雨穴さんが書いた不動産ミステリー小説。
出版社の公式ページによると、紙の書籍は2021年7月刊行で、248ページ。
雨穴さんのデビュー作でもある。
物語は、知人が購入を検討している中古住宅の間取り図から始まる。
ぱっと見は普通の家なのに、謎の空間、二重扉、窓のない子供部屋など、よく見ると気になる部分が出てくる。
主人公たちは設計士に相談しながら、間取りに隠された意味を探っていく。
雨穴さんは、オカルト系の記事を専門とするウェブライターで、YouTuberとしても活動しているらしい。知らんかった。
現実の相談や資料を読んでいるような見せ方が、作品の独特な雰囲気につながっていると思う。
Audible版は小林裕介さん、祐仙勇さん、水瀬真知さん、江田拓寛さん、小野慶子さんが朗読している。
再生時間は3時間58分。
付属資料としてPDFが用意されているらしいが、見つけられなかった。Audible版でも間取り図を確認できるということなんだろうが。。
思っていたよりファンタジー寄りだった
最初に間取り図を見て、「この家には何かある」と考えるところまでは、かなり現実的。
実際の不動産広告でも、部屋の形が不自然だったり、妙に使いにくそうな空間があったりすると、つい理由を考えてしまう。
ただ、話が進むにつれて、設定はかなり大きくなっていく。
現実にありそうな中古住宅の謎を追う話だと思っていたら、いつの間にか人間の欲や家系の因縁が絡む、ファンタジー寄りのミステリーになっていく。
この変化を面白いと思うか、現実味が薄れたと感じるかで、評価は分かれそう。
正直、後者。
発想の奇抜さには感心したけれど、「そこまで大きな話になるのか」と少し驚いた。
間取りという身近な題材から、ここまで話を広げたアイデアはすごいと思う。
登場人物が増えると、音声だけでは整理しづらい
Audibleの良さは、手ぶらで聴けること。
電車移動中や家事をしながらでも物語を進められる。
『変な家』も、序盤は会話が中心なので、音声だけで特に困ることはなかった。
間取りは困ったけど。。
問題は、過去の出来事や人物の関係が複雑になってから。
誰が誰と関係しているのか、どの家の話をしているのか、いつの出来事なのか。
少し聴き逃すと、頭の中で情報が混ざってしまう。
紙の本なら、数ページ戻って確認できる。
名前を見返すこともできる。
Audibleでも再生位置を戻せるけれど、文章を目で探すのとは違う。
実際、何度か「今の話は誰のことだっけ」となったし、聴き終わった今も細かい関係性は完全には整理できていない。
Audible公式ページには、購入後にライブラリーやアプリの目次から付属資料・PDFを確認できると書かれている。
つまり、「Audibleだから間取り図をまったく見られない」というわけではない。
「デスクトップのライブラリー、またはアプリ上の「目次」でご確認ください。」とあるんだが、見つけられないんだよ。。
聴く前から気になっていた点だった。
間取り図が重要な作品なのに、音声だけで成立するのかと思っていたからだ。
PDFがあるのは助かる。
ただ、見つからない。正規版とMusicは違うのかも。
いずれにせよ、移動中や家事中に、すぐ図を開いて確認は難しい。
間取り図をじっくり見て、本文に戻って、また図を見る。
こんな読み方をしたい人には、紙の書籍か電子書籍のほうが合っていると思う。
Audibleは一気に物語を進めたい人向け、図と文章を行き来したい人は本で読む、という使い分けがよさそう。
ちょっと気になったこと
ここからは、作品を聴いていて僕が引っかかった部分。
小説にどこまでリアリティーを求めるかってことでもあるんだが。。
間取りを普段から見ている立場としては、「まずここが違和感なのでは」と思うところがあったし、事件に関しては「法的にどおなの?」と思うところがあった。
窓のない部屋は、本当にそのまま成立するのか
作品に登場する窓のない子供部屋。
物語の核心で、かなり印象に残る。
不気味さの中心としては分かりやすいし、間取り図を見たときに「なぜ窓がないのか」と考えさせられる。
ただ、現実の建築基準を考えると、窓のない部屋の存在は、建築確認が通るのか謎。
部屋が大きすぎるし、中心部だし。
採光だけじゃなく、避難経路、耐火、不燃構造、警報設備などに関する規制や合理化の条件が厳しそう。
窓がないから即アウトではないが。。
設計士が違和感を覚えるとしたら、まずはここでしょう。
本家での事件は、隠し通すのが難しそう
もう一つ気になったのは、本家で起きた事件の扱い。
家の中で明らかな遺体を見つけたなら、家族だけで処理して終わり、というわけにはいかないはず。
事件性の確認は必須。
死亡診断書または死体検案書が必要で、死亡届などが関係してくる。
どのような状況であっても、医師が死亡診断しない限りは、諸々の手続きが先に進まない。
医師が立ち会っていなければ、警察が遺体や現場を確認し、必要に応じて事情聴取や解剖を行う。
警察が絡むんだよ。
その後、死亡届、火葬・埋葬許可証といった流れ。
だから、作中の出来事に対して現実の手続きを考えると、遺体を移動する意味がなくなる。
家族だけで隠しておくこともできないだろうし。
もちろん小説なので、物語を成立させるための省略や設定はあろう。
が、法的解釈という点で素朴な疑問が残る。
間取り図を楽しむなら、音声と本を使い分けたい
『変な家』は、とある住宅の間取りにある違和感を入り口にして、想像を広げていく作品。
現実っぽく始まるぶん、後半の大きな展開に驚く人もいると思う。
設定に納得しきれない部分を感じながらも、「この発想はなかったな」と楽しめた。
Audible版は、声優陣の朗読で物語を進められるのが魅力。
約4時間なので、長すぎず聴きやすい。
ただ、人物関係や間取りを整理しながら楽しみたい人には、音声だけだと少し厳しい。
現実の建築や法律として細部まで納得したい人は、これはあくまで小説だと割り切って聴くのがよさそうだ。

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