『ハヤブサ消防団』Audible感想。田舎ミステリが面白い理由

「家事をしながら小説を聴く」は、長編ミステリと相性がいい。
そう思って聴き始めた池井戸潤さんの『ハヤブサ消防団』。
ところが、面白さが勝ってしまい、家事の手が止まりそうになる場面もあった。

消防車

Audible
ハヤブサ消防団
感想

今回は、Audible版で最後まで聴いた感想。
原作の面白さはもちろん、耳で聴くからこそ感じたこともまとめてみた。
犯人や結末に関わる核心的なネタバレは避けているので、これから読む人もどうぞ。

『ハヤブサ消防団』はどんな作品?

『ハヤブサ消防団』は、池井戸潤さんによる長編ミステリ。
初版は2022年。
主人公は、東京での暮らしに見切りをつけ、亡くなった父の故郷であるハヤブサ地区へ移り住んだミステリ作家の三馬太郎だ。

のどかな田舎で静かに暮らすつもりだった太郎は、地元の人に誘われて消防団へ入る。
そこから、集落で起きる連続放火事件と、表には出ていなかった地域の事情に巻き込まれていく。

集英社は本作を、地方の小さな町を舞台にした「田園ミステリー」と紹介している。
第36回柴田錬三郎賞を受賞した作品でもある。
文庫版は2025年5月20日に発売され、608ページの長編。

Audible版は、15 時間 51分。

ハヤブサ消防団
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推理作家だからこそ見えるものがある

太郎が事件を追う理由は、最初から強い正義感に燃えているからではない。
自分の身近で起きたことが気になり、見過ごせなくなっていく。
その流れが自然で、主人公に無理やり探偵役をさせている感じがしない。

しかも太郎は、現場を調べる専門家ではない。
ミステリ作家として、人の話やできごとのつながりを考える。
その視点の一部が、消防団員としての地域との関わりに重なっていく。

読者から見ると、太郎は物語の中で一歩先に気づく人物。
こちらも一緒に推理しているようで、少しずつ情報が整理されていく感覚がある。
派手な展開だけで押す作品ではなく、会話や違和感が後から効いてくるタイプの面白さだ。

田舎暮らしの魅力と煩わしさが事件を動かす

この作品で印象に残ったのは、ハヤブサ地区が単なる事件の舞台ではないこと。
自然が豊かで、人との距離が近い。
都会では得にくい安心感がある一方、誰がどこで何をしていたかが伝わりやすく、噂も広がりやすい。

地域のつながりは、困ったときに頼れる強さになる。
消防団の存在も、火事に対応する組織というだけではない。
住民同士の関係や、土地に対する思いを見せる役割を果たしている。

そのつながりが、事件を解く手がかりにもなれば、真相を隠す壁にもなる。
ハヤブサを守りたいという気持ちも、登場人物それぞれで少しずつ違う。
田舎暮らしを美化しすぎず、面倒な部分まで物語に生かしているところがよかった。

『ハヤブサ消防団』が面白かった理由

一番よかったのは、土地への愛着とミステリが別々に描かれていないこと。
太郎は事件を調べるうちに、ハヤブサで暮らす人たちのことを知っていく。
知れば知るほど、単純に善悪を分けられなくなる。

ハヤブサを守りたいという気持ちは、物語を進める力になっている。
ただ、守るためなら何をしてもいいわけではない。
その危うさが、連続放火事件の不気味さにつながっている。

また、主人公がいわゆる万能なヒーローではないのもいい。
迷うし、勘違いもする。
それでも、気になったことをそのままにしない。
推理小説を書く人としての観察力と、住民としての当事者意識が少しずつ重なっていく展開に引き込まれた。

風景

Audibleで聴いてよかったところ

直近の何作品かは、ラノベのような感じでイラストのようなものを手掛かりにするようなものが続いてた。なんかよく分からないけど、まあいいかと流していたわけですが。
今回は長編小説。
しかも賞を取られるような有名作品。
さすが、ハヤブサ地区の空気や、登場人物が集まる場所の様子が頭の中に浮かんだ。

イラストに頼る作品ではないので、音声だけでも想像しやすい。(ラノベを否定してるわけじゃないからね。むしろ好きだし。)
会話が中心になる場面も多く、作中の人物が何を気にしているのか想像しやすかったような。
あれやこれや身体を動かす作業をしながらでも、物語を追いやすかった。

長編なので、紙の本を開く時間が取れない人にも向いている。
当然のことながら。
移動中や家事の時間に少しずつ進められるのは、オーディオブックの大きな利点だと思う。

Audibleで気になったところ。人の名前を覚えにくい

気になった点は、人の名前が覚えにくかったこと。
これは作品の欠点というより、耳だけで聴く形式との相性の問題だと思う。
あとは個人的な特性?

文字で読んでいると、名前を見て思い出しやすいと感じてる。
いつものことながら、「この人は誰だったっけ」となることがあった。
登場人物が多い長編ではなおさらなのか。。
そもそも人の名前を覚えるのが苦手ってこともあろうが。。

細切れの時間に聴いていたからかね。
数日空いてから再開すると、人物を思い出す時間が必要かも。
紙だと気楽に戻れるけど、Audibleってどこで誰が出てきたか、位置とかあんまり気にしないでしょう。。

それでも、途中で投げ出すことなく最後まで楽しめた。
名前を覚えるのが苦手でも、物語の流れを追っていけば大きく困る作品ではない。

消防車

ドラマ版も気になる。原作と同じ楽しみ方はできる?

『ハヤブサ消防団』は、2023年にテレビ朝日系でドラマ化された。
ドラマ版では中村倫也さんが三馬太郎を演じ、原作の山間の集落で起きる連続放火や殺人を軸に物語が描かれている。

原作を先に知っていると、人物がどんな姿で動くのかを比べられる。
反対に、ドラマから入って原作を読むと、映像では描き切れない人物の考えや、地域の関係性をより細かく味わえるはず。

Amazonの作品ページではシーズン1のレンタルと、TELASA for Prime Videoの案内が表示されている。
Prime Videoだけで視聴出来たらいいんだが。。

まとめ。『ハヤブサ消防団』はAudibleでも面白かった

『ハヤブサ消防団』は、連続放火事件の謎を追うミステリでありながら、田舎で暮らすことの心地よさと面倒さも描いた作品だった。
推理作家という主人公の立場が、事件に近づいていく流れにもよく合っている。

ハヤブサ地区の様子や登場人物の気持ちが頭に浮かび、最後まで楽しく聴けた。
長編を耳で楽しみたい人には、試す価値のある一冊だと思う。

おもしろかった。
ドラマ版にも興味が出てきた。
視聴方法は時期によって変わるようなので、しばらく配信状況を見ながら考えることにする。

集英社の公式特設ページでは、シリーズ第2弾『ハヤブサ消防団 森へつづく道』も案内されている。
太郎とハヤブサ地区のその後を追ってみてもよさそうだ。

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